膝の前が痛い… 痛みの原因と効果的なケア①

膝の痛み

椅子からの立ち上がりや、歩行時に感じる膝の痛み、本当に辛いですよね。

実はそんな辛い痛みも、セルフケアによって自分で治せる可能性があります。

これからお伝えするセルフケアは、臨床上でも多くの場面で使用する方法ですので、
多くの方に有効な手段といえます。

本記事では膝の痛みの原因で、最も多いといえるお皿回りの脂肪(以下膝蓋下脂肪体)の痛みを
楽にするセルフケアについて解説していきます。

あなたの痛みの原因が膝蓋下脂肪体であれば、今からお伝えするセルフケアを実践することで、
立ち上がりや歩行時の痛みは消失していきます。痛みに悩んでいる方はぜひ実践してみてください。

膝蓋下脂肪体とは?膝蓋下脂肪体による痛みの原因

膝蓋下脂肪体は大腿骨の末端と、お皿の下にある脂肪組織で、本来は膝の衝撃を和らげる役割を
持っています。
その脂肪が、外傷や繰り返しの刺激、膝の変形による関節内の炎症等により、脂肪が炎症・線維化し、膝の屈伸運動に伴う痛みを生じさせます。
また、加齢による水分量の減少や、不活動による膝蓋下脂肪体の低酸素化も、膝蓋下脂肪体の線維化を助長させると言われています。

近年,膝関節周囲の疎性結合組織の一つである膝蓋下脂肪体(IFP)の線維化が変形性膝関節症(膝OA)に伴う疼痛や拘縮の長期的な予測因子として注目されている

(出典:膝蓋下脂肪体の線維化と酸欠に着目した変形性膝関節症の進行を予防する運動療法の開発
研究代表者:工藤 慎太郎 森ノ宮医療大学, 総合リハビリテーション学部, 教授)

森ノ宮医療大学の工藤先生は私の尊敬する理学療法士の一人ですが、上記の研究を2024年から開始して2028年まで行う予定となっています。今後も先生から新しい知見を学ぶことができるでしょう。

何やら難しい単語が続いて分かりにくかったかと思いますが、簡単にまとめますと「本来柔らかいクッション(脂肪)」が固くなって「膝の運動時に詰まって」痛くなるということになります。
下図1が膝蓋下脂肪体になります。

図1:シンセルクリニック(sincellclinic.com/column/xn4UNktT)より引用した画像

実際の写真ではこのように脂肪が表層に現れます。

上の写真は私のクライアントの方の膝ですが、赤〇で囲んだところが膝蓋下脂肪体になります。この説明をすると「これお皿じゃなかったの!?」と言われることが多々ありますが、膝に痛みを訴えられている方の多くが、膝の表層に脂肪が確認できます。

こちらのクライアントの方は実際に膝周囲に痛みがあった方ですが、長時間座った状態から歩き始めるときに、膝のお皿回りに痛みが出現していたため、パーソナルトレーニングを開始しましたが。施術は膝がしっかりと伸びるように行い、膝蓋下脂肪体を柔らかくしたところ痛みは消失しました。

膝蓋下脂肪体は線維化が進むほど(固くなるほど)、症状の改善が難しくなりますが、初期であればセルフケアで十分改善します。ただし、膝が真っ直ぐ伸ばせなくなってきた人は、セルフケアの効果が著しく下がります。まずは膝が真っ直ぐ伸びるようにストレッチなどを行いましょう。

あなたの膝の痛みは膝蓋下脂肪体が原因?自分でできるセルフチェック

あなたの膝の痛みが、膝蓋下脂肪体によるものかを簡易的にチェックする方法として、下記の方法をオススメします。膝の前側や内側に痛みを感じる方はぜひ行ってください。

1.膝を伸ばした状態で膝のお皿回りが熱を帯びているか確認します。
熱を感じ取りやすくするため、確認は手の甲で行います。他の部分よりも熱を感じたら
受診すべき症状の一つですので、それ以上は何もせず整形外科を受診することをオススメします。
受診すべき症状については、下記を参照ください。
膝・腰が痛い時…今すぐ受診すべき4つの症状 | Body Solution ~痛みの悩み相談所~

熱を感じなければ⭕️部分圧迫をし、痛みの有無や強さを確認します。

2.次に膝を曲げた状態で先ほどの⭕️部分を圧迫し、圧迫したまま膝を伸ばしていきます。
膝を伸ばすにつれて、圧迫部分に痛みが出現するor増していくか確認します。

3.最後に⭕️部分を圧迫しないで、膝を曲げた状態から伸ばして痛みの有無や強さを確認します。

これはHoffa’s testという方法を応用したテストです。
上記2で痛みがあって、上記3で痛みがない場合には、脂肪による痛みの可能性がより高まります。その場合には、後述するセルフケアを実施後、再度このテストや普段痛みを感じていた動作を行ってみてください。
その際、痛みが軽減しているようであれば、高い確率で膝蓋下脂肪体による痛みといえます。

膝蓋下脂肪体による痛みを楽にするセルフケア4選

太ももの裏(半膜様筋)のマッサージ

座った姿勢をとります。(イスでも床でも可)
痛みのある膝を少し曲げた状態で、下の写真の赤い縦線を目安に内側に向かって筋肉を
掴むようにマッサージします。1分~2分程度、筋肉を横方向に動かすようにしてください。
(下図は分かりやすくするためにうつ伏せの姿勢になっています。)

太ももの裏(半膜様筋)とふくらはぎ(下腿三頭筋)のストレッチ

座った姿勢で片膝を曲げた状態からつま先を天井に向けて、膝を出来るだけ伸ばしていきます。
ポイントは常につま先を天井に向けることです。
膝を伸ばしきったところで止めて、10秒間その姿勢を保ちます。この動作を10回ほど繰り返します。

膝蓋下脂肪体のマッサージ

膝を伸ばした状態で、膝のお皿回りにある脂肪を中央に寄せるように動かします。ポイントは深層の脂肪を動かすように意識することです。

膝伸ばし運動(セッティング変法)

膝の下にタオル(手でも可)を入れて、そのタオルを圧迫するように膝を伸ばします。
それと同時に、膝のお皿を上に引き上げて、脂肪の移動を促します。

一般的にセッティングと言われるこの運動は、膝の内側の筋肉を強化する運動といわれていますが、膝蓋下脂肪体の動きを促したり、膝の裏側を伸ばす運動にもなりますので、必ず行っていただきたい運動です。
ポイントはこの運動を行う前に、必ず上記1から3までのセルフケアを行うことです。膝が真っ直ぐ伸びて、脂肪の動きが出てからこの運動を行わないと効果は低くくなります。

まとめ

この記事では膝の前側の痛みで、最も多い原因といえる膝蓋下脂肪体に対するセルフケアについて解説しました。
膝蓋下脂肪体による痛みは、初期に対応すれば自分で治すことも可能ですが、放っておくほど困難になっていきます。
あなたの膝の痛みが膝蓋下脂肪体によるものであるならば、今すぐこの記事に記載してあるセルフケアを行っていただき、痛みとは無縁の生活を送っていただければと思います。

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